舞台「未来記の番人」が終わって、もう二週間以上たつなんて、なんだか信じられない。舞台の上に千里丸がいて、士郎左がいて、紅羽がいて、巽がいて、風が吹き荒れて、四天王寺があって、泉屋があって。

夢のような時間でした。

あのあと、舞台が無事に終わって緊張の糸が切れたのと同時に、コロナ禍でのもろもろの疲れが出て、ちょっと体調崩しまして、「未来記」の時間を振り返る余裕もなくしていました。とにかく舞台を最後まで見届けたいと、その思いでがんばってたので、ぷつんといっちゃいまして。

新刊「家請人克次事件帳 春告げ鳥」も刊行になったのに、そのお知らせブログも書けなくて。……すでに発売中です、どうぞ、よろしくお願いいたします!!

そんな感じで過ごしていましたが、でも、あの「未来記」の濃い時間を忘れたわけじゃなくて、テレビで「紅蓮華」をおどる戸塚くんを見て感動したり、ABC-ZやSKE48の歌や「初恋」や「つづれおり」を聴いたりしながら、「未来記の感想をブログに書きたいなあ」と思いつつ、心身を休めて過ごしていました。

ちょと元気が出てきたので、まず、舞台を見たあとの感想じゃなくて、見る前の、企画段階でのことを、少し、書いてみます。

主演が戸塚祥太さんと知ったとき、私が感じたこと。長くなるんですが、私にとっては、それなりにドラマチックなことだったのです。

戸塚祥太さんという方の存在を、私が初めて認識したのは、15年前の帝国劇場です。「DREAM BOYS」。関ジャニ∞の歌が気になりはじめ、ナマで聞いてみたいなと思っていたところに、運良くチケットが手に入りまして、ジャニーズの舞台を初体験する機会を得ました。

当時の私は駆け出しの作家で、地方在住のため、やりとりはメールと電話がメイン。そのころシリーズものを書かせてもらっていた東京の出版社を、訪ねたことはありませんでした。

なので、帝国劇場のチケットがとれたこの機会に、勇気を出してお世話になっている編集者さんに対面でご挨拶するんだー、と。初めての出版社訪問。初めての、編集部の方々とのディナー。もう緊張するわ舞い上がるわでエラいことになってしまい、ディナーの終わりに出てきた、普段飲まないコーヒーもうっかり飲んじゃって、ホテルに帰ったあと、興奮とカフェインでぜんぜん眠れなくて、明日、座席で眠っちゃったらどうするんだよーとか思ってました。

翌日の「DREAMBOYS」。もちろん眠くなんかならず、夢中で観劇したのですが、そのとき、主役の関ジャニ∞とKAT-TUNのほかに出ていたジュニアのグループのうちのひとつが、当時まだ四人グループだった「A.B.C」でした。ものすごいアクロバットを披露されてまして、強烈に印象に残りました。正直、主役の2グループ以外、誰も知らない状態だったのですが、そのグループのことはすぐに覚えました。

今回、「千里丸は戸塚祥太さんです」と聞いたときに、まず思い出したのが、「あのドリボのアクロバットの!」ということ。ご本人にとってもファンの方にとっても、どんだけ情報古いねん、という話かとは思いますが。

あのときのグループが、後にデビューしたことは知っていたのですが、戸塚さんが、その後、数々の舞台で経験を積まれていることは、恥ずかしながら知りませんで。

でも、それでも、今の戸塚さんをあまり知らなくても、十五年前、あの舞台の上で、ものすごいアクロバットをしていた姿を覚えていたから、「大丈夫、絶対、納得できる千里丸になる」と、すごく安心したのですよね。

「主役は戸塚さんで、すでに衣装合わせ終わってます」と連絡をもらったのは、実は、「舞台化進めたいって言われたけど、その後いっさい音沙汰ないわ」状態が続いたあとの、二ヶ月ぶりの連絡でしてね。もうね。やっぱりこの時期に舞台とかムリで立ち消えになったのかなーと思ってたら、すでに千里丸の衣装着てるひとがいるんかーい!と、ちょっともやもやはあったんですよ(松竹さんの責任じゃなくて、どっちかっていうと私と出版社の間の連絡ミスでした)。

でも、その不安とか、どないなってんねん感を、「あのドリボのひとだー!」が吹き飛ばしてくれました。その時点で知らされたのは主演俳優の名前だけ、だったんですが、それでも、よし、この作品、不安にならなくてもいいぞ、と。

そんで、すぐに新曲買いに行って、今の「A.B.C-Z」と「戸塚祥太」を認識しなおしました。今でも、「頑張れ、友よ」を聞くと、当時の、大きな緊張とそれ以上に大きな期待でどきどきハラハラしていた気持ちを思い出します。

十五年前、帝国劇場の座席で、初めて見る戸塚さんのアクロバットに目を奪われていた駆け出し作家の私は、十五年後まで作家を続けていられるなんて思ってもいなかったし、自分の作品が新橋演舞場や松竹座にかけてもらえて、その主役を目の前にいる戸塚さんがやるなんて、夢にも思ってなかった。

なんだか、すごいめぐりあわせだなと、私は勝手に感じていました。

そして、本当に、すごい千里丸を見せていただきました。

今、上に書いたように、私はちょっとツラい状況で、そして、世間もツラい状況で。だけど、あの松竹座の大千秋楽で、千里丸の戸塚さんが客席に言った、「みんなで生き延びよう、ここを乗り越えよう、負けるなよ」という言葉を(ニュアンスなので、正確じゃないですが)、かみしめてます。

そうだ、生き延びよう。

そんで、舞台の感想も今から書くぞ。
これ、文章で残しておかなかったら、絶対、数年後にめちゃめちゃ後悔するからなああああ。