舞台「蘭 緒方洪庵・浪華の事件帳」が、5月20日、大千穐楽を迎えました。
無事にすべての公演に幕が下りましたことに、あらためまして、お祝いと、そして、お礼を、申し上げます。

本当に、ありがとうございました。
舞台「蘭」、大好きです!

大入り袋、いただきました。
ありがとうございました!!

大千穐楽を観劇し、自宅に戻りまして、「何もやることがなくなって、ばたんきゅー」という気持ちだったりもするのですが、実際には、ありがたいことに、やることがたくさんあるので、ばたんきゅーはしておりません。

いやはや、それにしても。
長いようで短い、短いようで長い、まるで一本の……と、頭のなかで加島屋さんがしゃべり出してしまうような、半年間でした。

舞台について、書きたいことは山ほどありますが、まずは、初日の幕が開くまでのあれこれを、改めて、振り返ってみようと思います。
幕が開いたあとのことは、その後で、また。

「舞台化オファーがあります」と初めにうかがったのは去年の夏ですが、正直、あまり本気にしていなかったので、真面目に受け止めたのは、去年の11月下旬、正式決定の知らせを受け取ったあと。

キャストに関しては、夏の段階で、「主演は藤山扇治郎さん、左近役は元宝塚の方になる予定です」とだけは聞いていまして、その組み合わせ、実現したらすごいなとは思いましたが、なんせ、そのときは、大がかり過ぎて逆に嘘っぽく聞こえてしまいましたから、それ以上、深くは考えませんでした。
で、正式決定の際、その時点で決まっていた他のキャストさん一覧に、久本雅美さん、石倉三郎さん、神保悟志さんといった、テレビでおなじみの名前があって、びっくり。北翔さんは、すみません、宝塚事情に疎いもので、詳しい友人に電話して、「例の話、決まったんだけど、左近役が、元トップの、なんか難しい漢字の、北と飛翔の翔……」あたりで、「ほくしょうかいりー!?!?! ウソでしょー!?!?」と絶叫されたので、ことの重大さを知りました。さらに、刀剣乱舞プレイヤーとしては、饅頭屋が「にっかり青江」だということに、これまたびっくり。

ちなみに、演出家がニッキ、という点については、夏の段階でめちゃくちゃびっくりしていて、三日くらい、頭のなかに「君だけに」リピート状態でした。

一通りびっくりした秋の終わりから、二ヶ月くらいたったあと。
台本が送られてきました。
またまた、びっくりしました。
「なんだ、これ。私の作品世界と全然違う」。

テンポ良く進むコミカルな会話、はさまれるお笑い、愉快なキャラ付けをされた登場人物たち。私の書いた「洪庵シリーズ」というのは、そういう世界観では、あまりないんです。読んでくださった方はご存じの通り。

「何か台本に言いたいことがあれば、今、どうぞ。数日しか待てませんが」という状況のなか、私も慌てまして、双葉社の担当編集者さんと、何度も長文メールをやりとりしました。「このまま舞台になっちゃっていいんでしょうか。なんか、私の世界と、あまりに違いませんか」。めちゃくちゃ悩みました。「何か言ったほうがいいのか。言わずにいたら、幕が上がったときに後悔して、あのとき軌道修正をお願いしておけば、と思うのではないか」と。

でも、一方で、「プロデューサーさんや、演出家の錦織さん、脚本の松田さんは、すでにある程度かたまったイメージを持って、この企画を決定したはず。なのに、舞台素人の原作者がアレコレ文句つけて、『本当にやりたいことができなかった』となったら、なんか、イヤだ。誰かの創造を邪魔する立場に、なりたくない」とも、一人のクリエーターとして、思いました。

……まあ、「ここまで進んじゃったら言ったって聞いてもらえるかどうかわからないし、それなら、初めから言わないほうが諦めもつくか」と思う気持ちがあったのも事実なんですけども。

とにかく、最終的には腹をくくりまして、数日後、「すべてお任せします。こちらからは特に言うことはありません」と、松竹さんにはお伝えしました。その後、修正版の台本にも同様に、「何も言うことはありません」で通し、それで、納得していました。

……そのはずでした。

……でもね。

再度の衝撃が走ったのが、三稿めの台本もらったとき、でした。

もうね。
1ページめにね。
「若狭マイクパフォーマンス」って書いてあるんですよ。
それを見た瞬間に、「ちょっと待て、うちの饅頭屋に何やらすつもりやねん、あいつ、あれでも在天別流の頭目の右腕なんやぞ」と、めちゃくちゃうろたえました(一言だけで、具体的に何をやるかはまったく書いていなかった)。

衝撃に震えつつ、ページをめくれば、一幕の最後に「東儀左近のテーマ」って歌が入ってる。え、何これ。左近ちゃん歌うの? 時代劇にいきなり歌? まさかのキャラソン?

さらに慌ててラストまでたどれば、「カーテンコール、全員で踊る」って書いてある。え、踊るって、踊るって、天游先生も船頭さんも踊るわけ???何それ?

もうね。
いったい何が始まるのかと。
私がイメージしていた、「時代劇の舞台」と、何もかも違うぞ、と。

楽しみは楽しみだけど、とっても不安。
そういう時期をしばらく過ごし、迎えたのが、あの、「稽古場見学」でした。
結果、「本番楽しみ!」状態になったのは、先にブログで書いた通りです。

本番を終えた今だから、お稽古場で見たことも、もう少し書けるかな。
通し稽古以外で、チェックされてた箇所のことなど。

まず、手先の半治さんが魅せてくれた、松葉杖小ネタ。
あちこちに笑いどころが挟み込まれてましたが、その一つ一つ、綿密にチェックして、何度もブラッシュアップして……という感じでした。おあきちゃんの「杖ガタガタ言わすな」シーン、とか、章が杖蹴っちゃったあと、「大変でしたね」っておあきちゃんに渡して、半治さんが「こっちや」ってツッコミいれるところ、とか。……自然な動きで笑いをとることが、どんなに高度な技なのか、繰り返し、呼吸を合わせてお稽古される姿を見て、初めて知りました。

あと、高麗屋の殺陣も。初見では、「わー、かっこいいひとが回し蹴りするとかっこいいもんだなー」とか暢気に思っててたんですが、その後、鏡の前で、振り上げた足の角度を何度も確認されている饅頭屋さんを目撃し、かっこいいひとが回し蹴りをしたからといって無条件にかっこよくなるわけではないんだな、磨き上げた結果なんだな、と。

あと、ですね。左近ちゃんの歌。……というか、北翔さんの歌。ナマで聞いたのは、お稽古場が初めてだったのですが、もう、すごくて。ともかく、すごくて。「すごい。さすが宝塚。すごい」しか感想が出てこなかったんですが、本番始まったあと、一緒に見た友人知人のほぼ全員が、一幕を終えた段階で、「宝塚すごい……!」と、私と同じ反応をしていたのがおもしろかった(その後、「さすが宝塚」もいいけど、「さすが北翔海莉」が、もっとふさわしい言葉なんだなと思うようになりましたが、初めはやっぱり、どうしても)。

……そんなこんなで、迎えた初日。
5月6日。
松竹座の幕が上がりました。

というわけで。

「まだ続くのよ!(舞台感想ブログが)」