そもそも、なんでジュニア向けを書くことになったのか。

とある日のこと、以前に時代小説家としてのお仕事を一緒にしたことがある、ある方から連絡がありまして。子供向けの小説に興味はありますか、と。その方とは、とても楽しくお仕事させていただいて、いろんな話もしましたから、「もともとはライトノベル作家になりたかったんですよねー」なんてことも、話していました。それを覚えててくださったのかな、と思って(ライトノベルとジュニア向けはジャンルが違いますが、時代小説に比べて若い層向け、という点では共通しているので)、もちろん、返事はイエス。その方のご紹介で、小学館の担当さんに、お会いすることになりました。そのときはまだ、「こども向けの歴史ものかな。ジュニア向け伝記とか」なんて思っていました。

お会いしてみたら、そういう依頼ではなく、「おもしろければ何でもいいんで」とのこと。「だったら、宇宙人が出てきても、魔法少女が出てきても、超能力者が出てきても、オッケーですか?」「オッケーです」なんてやりとりをして、すごくワクワクしたのを覚えております。だって、そこまで「なんでもアリ」の依頼をもらえること、当たり前ですが、これまでになかったので、すごく新鮮で。時代物はもちろん大好きですが、ファンタジーやSF系の、空想の世界で描く物語は、子供の頃の物語好きの原点ですから。……ちょうど、創作に対する気持ちに風穴開けたい時期でもありましたし、時代小説を書き続ける上でも、刺激になると思いました。

それから、時間をかけてアレコレ考えて、少しずつ打ち合わせを重ねて……たどりついたのが、妖怪モノ。コレも、ですね。実は、時代小説でも、妖怪モノはどうですか、と声をかけていただいたことはあるんです。でも、そのときはお断りしました。なんでかというと、怖いモノが苦手だからです。大人向けで妖怪モノとなると、どうしても、怖くなる。私には無理です。でも、今回は子供向け。かっこいい妖怪や可愛い妖怪の話なら、楽しく書けそう。百物語とか怪談とか、字面を見ただけで逃げたくなる質ですが、「犬夜叉」なら好きなので。

というわけで、妖怪について、アレコレ調べました。今回の作品、メインの妖怪が「酒呑童子」と「鵺」なんですが、退治されたのはいつなのか、どの史料に乗っているのか。かぐや姫や浦島太郎もでてきますが、できる限り年代比定して、どっちが年上とか、はっきりさせたい。伝奇モノ好きとしては、年表にキャラのっけて、接触可能な年代をつきとめて、接点を妄想する……というのが何より楽しいもので、妖怪モノでも、そこははずせません。鵺と酒呑童子が会ったことがあるとしたら、この辺りだな!とかそういうの、ワクワクと調べました。……結局は歴史を調べるのが好きなんだなあと再認識もしました。史料を読むのは、やっぱり楽しい!

……というふうに、歴史風味、伝奇風味は忘れておりませんので、築山のこれまでの作品を楽しんでくださっていた方にも、読んでいただければ、嬉しく思います。ぜひ、お手にとってくださいませ!

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