新刊、そろそろ店頭に出るころでしょうか。
「十一屋」シリーズ、二巻め表紙は、一巻めのシックな夜空とは対照的に、華やかな新町の様子です。宗さんの後ろをきょろきょろしながらついていく小次郎くんが、いかにもという感じで可愛い。前作に引き続き、素敵な絵を描いていただけて、幸せです。ありがとうございました。
あと、帯も、めっちゃ気にいってます。
「人間性に難あり だが眉目秀麗にして頭脳明晰」。
そっかー、「宗さん」て、一言でいえばこういう男なのかー(笑)。
「宗さん」は、個人的には、かなり思い入れのある……といいますか、「思い切って」作ったキャラクターでして。
というのも、このひとは、私が歴史上の人物を出す上で、つねに大前提としてきたラインを踏み越えているんです。つまり……実在の人物がモデルなのに、年齢がフィクション。モデルとなった史実の「橋本曇斎」とは、年齢が違う。
この設定には自分でかなりの葛藤がありまして。(……とか書くと、真田大助が大坂の陣後も生きてたりする小説書いてるくせに何を言うとんのやと思われるかもしれませんが、それはそれ、これはこれ、でして)
実は、「十一屋」を舞台にした物語を書こうと思いついたときには、キャラクターはみな、史実の年齢設定にしていたのです。でも、そのまま書き始めてはみたものの、どうしても物語に馴染まない。自分でシンクロできるキャラクターにならなかったのです。文章も進まないし、物語も停滞しまくるし。
しっくり来ないままに悩み続け、迫る締め切りに焦り、「これじゃ書けない。もう締め切り、間に合わないかも……」とあきらめかけたとき、いきなり脳内に降ってきたのが、今の「宗さん」でした。ああ私、このひとが書きたかったんだ、と思った瞬間に、相棒の「八神小次郎」のキャラも、すとんと生まれてきました。命名に常に苦労する私にしては珍しく、名前も一瞬でひらめいて。
その後、嘘みたいに文章が出てくるようになりまして、自分史上最速のスピードで書き上げたのが「星ぐるい」。あのときの、熱に浮かされたような経験は、他に覚えがないです。自分のなかで何か覚醒したみたいでした。書き終わったあとも、まだ「十一屋」が書きたくてしょうがなくて、「続き、この勢いのままでつきやま楽所にWEB連載してもいいかなあ」などと口走っていた覚えがあります。そのくらい、まだまだ書きたかった。
まあ、その後、いろいろ(主に私生活の)事情があって、二冊目まではかなり間が空いてしまったのですけれど。
でも、二冊目、無事に出せてよかった。
そういうわけで、自分史上、発生から活字化まで最短だった主人公「宗さん」は、私にはかなり、特別な思い入れのあるキャラクターなのです。
で。決定稿にならなかった旧バージョンの「十一屋」において、主役だったのが、「十一屋の手代・子之助」という若者でして。
宗さん&小次郎の登場によって、子之助は主役ではなくなりましたが、キャラとして消してしまうのが惜しく、「星ぐるい」でちらりと物語に登場したあと、二巻め「花の形見」で、メインのゲストキャラとして復活いたしました。
「花の形見」は、言ってみれば、もしかしたらメインになったかもしれなかった、もう一つの「十一屋」コンビ、「十一屋の天才学者」&「学問を志したこともある手代頭」の物語、でもあるのです。
ぜひぜひ、お手にとってみてくださいませ!
……ちなみに、「宗さん」と逆に、発生から活字化までものすごく長くかかった記録的なキャラは、今んとこ、上にも書きました「あかね」さんちの「真田大助」さんです。彼はまだアマチュア時代から書いていたキャラなので、軽く二十年物。今後、アマチュア時代の他のキャラを活字化しない限りは、抜かされない気がします。