「天文御用十一屋」を書くにあたって、取材にはあちこち行きました。
そのなかのひとつが、大阪の貝塚市にある「善兵衛ランド」。
善兵衛とは、江戸時代後期の望遠鏡つくりの名人「岩橋善兵衛」のこと。もちろん、十一屋とも行き来があります。当時の日本の天文学は、技術的には西洋に及ばないところが多かったわけですが、善兵衛さんは、そんな当時の日本で、ダントツの腕を持っていた名人。和泉の貝塚に住んでいたひとですが、幕府天文方でも、このひとの作った望遠鏡を取り寄せて使っていました。

「善兵衛ランド」は、その善兵衛さん関連の近世史料や、江戸期の望遠鏡などの展示が充実しています。それに、なんと、高性能の望遠鏡で天体観測をさせてくれる!

実は、近世の史料&望遠鏡が目当てで行ったので、現代の望遠鏡や天体観測にはそんなに興味がなかったのです。でも、すすめられるままに高性能望遠鏡をのぞいてみて、びっくり。太陽の光にかきけされて肉眼では見えない昼間の星まで、見える。青空のなかに煌めく星が、あんなに美しいものだとは……!!
そこまで高度な望遠鏡で見る星は、江戸期の小説を書くのに関係ないと言えばないんですが、そういうこととは関係なしに、素晴らしかった!

星に魅せられ、のめりこんでいった十一屋の人たちの気持ちに近づけたように思いました。きっと、江戸時代、初めて観星鏡で空を見たひとは、あの日の私以上のインパクトを感じたに違いないのです。なんといっても、月のクレーターや木星の縞模様、衛星などを初めて目にしたわけですから……。

実は、取材で得ることというのは、案外、こういうことも大きかったりします。実際に原稿の上に書かないことのほうが圧倒的に多いけれど、その場所に行って感じたことをキャラ作り、物語作りに活かしていくことが出来る。

「善兵衛ランド」職員の皆様には、本当にお世話になりました。とても親切に展示の解説をしていただき、史料をご教示いただき、質問にもいろいろ応えていただき……本当に感謝しています。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

善兵衛ランドのHPはこちら。
http://www.city.kaizuka.lg.jp/zenbe/

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