新刊、先週より書店に並んでおります。
『浪華疾風伝 あかね 壱 天下人の血』(ポプラ文庫ピュアフル)。
大坂の陣から八年後、新たに生まれ変わろうとしている「浪華」を舞台に、若者たちが出逢い、それぞれの信念を胸に動き出す……青春時代小説。
どうぞ、よろしくお願いします!
今回、帯には左近ちゃんこと栗山千明さんから、推薦コメントをいただきました。ありがとうございます。藤田香さんの手による茜の凛々しいイラストの下に、これまた凛とした美女のお姿が並んでいまして、麗しいです。こういう形で、再び栗山さんとご縁をいただけたこと、とても嬉しく、幸せに思っています。
栗山さんが格好良く演じてくださった左近に比べると、茜は、同じ戦うヒロインといえど、少し弱さのある(腕前の面でも、気持ちの面でも)少女。敵よりも前に宿命と戦わなければならない子ですけれど、少しずつ強くなっていく……はず。見守っていただければ嬉しいです。
また、今回は、久しぶりに「解説」をつけていただいてまして、時代小説書評家の青木逸美さんが書いてくださいました。私の他の作品との関連などにも、とても丁寧に触れてくださっていて。本当に、ありがとうございます!
その解説にも書いてくださっていますが。大坂の陣の後に世に流れたという「豊臣秀頼薩摩落ち伝説」。昔から、大好きな話です。
「花のようなる秀頼さまを
鬼のようなる真田がつれて
退きも退いたり 鹿児島へ」。
この俗謡が世に流れた頃、もしかしたら、本当に、どこかに真田幸村・大助親子が生きていたかもしれない。豊臣秀頼とその子供たちは身代わりをたてて逃げ延びたかもしれない。
鹿児島県の谷山には、今も、「豊臣秀頼の墓」と伝えられる石碑があります。民家の庭にひっそりとたたずむ碑です。学生時代、見に行きました。
また、豊臣家の最後の姫で、鎌倉東慶寺で出家した天秀尼という女性についても、昔から興味がありました。二十年近く前、鎌倉に初めて行ったときも、まず東慶寺にお参りしました。縁切り寺としても有名なお寺です。
今回のヒロイン・茜は、この東慶寺の天秀尼と深い関わりのある娘。
茜と行動をともにしているのは、真田幸村の息子・大助。
秀頼を薩摩に連れて逃げたと伝説も残る真田一族ですが……実は、私が初めて好きになった歴史上の人物が、真田幸村・大助親子。出逢いは中学時代。それ以来、「戦国なら真田、幕末なら新撰組」という二本柱で、私の歴史ファン人生は続いております(笑)。
歴史でモノを書く仕事についた後になっても「ファンです!」というスタンスで語れる歴史上の人物は、この二組だけ。このひとたちは、きっと、一生「ファン」というスタンスでいると思います。なんかこう……「野暮なこともかたいこともいいっこなし!」というような(笑)。そのへんのニュアンス、判っていただけると嬉しい。少女時代の刷り込み、とでもいいましょうか。もう少しオトナになってから、歴史研究者として出会った魅力ある人物たち(たとえば洪庵先生のような)とは、また別枠なのです。
その真田と対峙する形で物語に登場するのが、龍笛を吹く謎の男・甲斐。龍笛を吹いている、というので、なんとなく素性は(判る方には)判っていただけると思いますが、そういう筋の男です。
〈在天〉絡みの物語は、これまでに、章と左近のシリーズ二冊と、左近の兄の弓月がメインのもの一冊と、どちらも近世後期で書いていますが、それらの話を書いたときに、すでに難波宮から続いてきた〈在天〉の歴史はアレコレと頭のなかにできあがっていまして。今回は、そのなかでも、近世大坂ができあがっていく時代の〈在天〉の物語です。
近世の大坂を語る上で欠かせない豪商・鴻池一族も登場します。両替商鴻池の「初代」と位置づけられる善右衛門正成は、物語に登場する鴻池新六の、九番目の子供。このときの鴻池は、まだ両替商になる前の、少し大きめの造り酒屋に過ぎませんが、その後、大坂を代表する豪商になったのは、いうまでもないこと。両替商というのは、時代ものには悪役で登場しがちなのですが、近世の大坂を支えていたのがこういった豪商たちであったことは確か。興味のつきない存在です。
……というふうに、アレもコレもと欲張ってちりばめて書いた、「浪華疾風伝 あかね」。
ぜひぜひ、よろしくお願いいたします。
シリーズ2巻目は、先日脱稿しまして、3月発売予定です!
今、読売新聞社のサイトYOMIURI ONLINEのなかの、女性向けポータルサイト「大手小町」にて、プレゼント企画を実施していただいています。
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/present/20100107-OYT8T00373.htm
五名様に、著者のサイン本をプレゼントさせていただくという企画。締め切りは20日(水)。ぜひご応募くださいませ(このブログをUPしたら、本にサインを書く予定です^^)
長い記事になってしまいました……。
長くなったついでに、こちらも載せておきますね。
去年の夏に二回取材に行った、鎌倉東慶寺。風情のある、とても素敵な場所です。天秀尼さまのお墓に手を合わせてまいりました……。