「浪花の華」最終話から、気が付いたら二週間。
先週末にひとつ原稿を仕上げた後、その仕上げ直前に「とりあえず後回し」にしていたアレコレを順番に片づけていまして、そうこうしているうち、どんどん時間が過ぎてしまいました。

その間、ちょこちょこと書いていたら、だんだん長くなっていった最終話の感想。これ以上書き足していてもキリがないので、覚悟決めてUPします。

最終話「明日の華」、原作では「北前船始末」の四話「蘭方医」。その後半。

メインのストーリーについては、もう何も言うことはない気がします。満足。
炎上する座敷牢から逃げ出したあとの章と左近のシーンは、全話通したなかでも特別に好きなシーンになりました。あれこれ言うと無粋なので、このシーンと、ラストの二人の別れのシーンに関しては、もう何も言いません。

天游先生の牢の中での言葉。
お定先生、耕介さんが章を見送るシーン。
思々斎塾の塾生たちとの別れのシーン。
「緒方章」と名前を呼んだ若狭と、きちんと挨拶した章。
最後までお茶目だった同心&手先。
やっと少し兄妹らしい心のつながりを見せてくれた弓月と左近。
そして、章と左近の別れ。

素敵な最終回でした。
とても幸せな気持ちで見届けられました。

章と若狭、左近と弓月のシーン。どちらの二人も、原作にくらべて冷ややかに相対するシーンが多かったので、気になっていたのですが、最終話はかなりやわらかな雰囲気になっていて嬉しかった。特に、楽人兄妹があんまり仲良さそうでなかったのは少々寂しかったもので、最後の弓月さんの表情に、ちょっと安心しました。

惜しかったのは、鉄砲二百丁の行方について。この最終エピソードで〈在天〉の人たちは、抜け荷の鉄砲を(金も払わず)佐伯一味から横取りするというなかなか狡いことをやっているんですが、「その奪った鉄砲、〈別流〉は何に使うつもり?」と誰かにつっこんでいただきたかった。ドラマの章は〈在天〉に対してそこまで客観的になれなかったですね、最後まで。荷を横取りされた佐伯一味の黒幕が登場しなかったのも、残念。……このへんのエピソードの取捨選択は、8話までの流れや時間の制約の関係で、仕方ないですね。加藤虎ノ介さん演ずる佐伯京次郎は、黒幕なしでも充分、見応えありました。

お定先生と左近のシーンが原作通りに出てきまして、これも嬉しかった。女性キャラクターの少ない物語なのですが、ドラマでも、左近には、かっこよく強かに生きている女性の先達であるお定先生と、ちゃんと顔を合わせて欲しかったので。そして、傷だらけで生きている左近に、同性の、一目置くことのできる、腕の立つ医者を紹介してあげたというのが、章が左近にしてあげられた大きな置き土産なんではないかと私は思っています。

章と天游先生の別れのシーン。天游先生は章が「緒方洪庵」となるのを見届けることはできませんでしたけれど、先生の志は、章が受け継ぎ、章によってさらに後世にも伝えられたはず。蟹江敬三さんの天游先生と、萬田久子さんのお定先生は、このドラマの大黒柱でした。さらにそこに爽やかな耕介さんがいて……中家は、見ていてホントにほっと安心できる存在でした。

ドラマでは最後に荒れ果ててしまっていた高麗屋。あれは幕末の動乱期のイメージなのでしょうか。実は最終話の脚本を見て「さびれた高麗屋」というシーンがあるのを知って、慌てて「さびれないうちに見に行かなければ!」と映画村に飛んでいきまして。そのときに、前回UPした「高麗まんぢう」などの写真を撮ったのでした。実際、高麗屋セットはあのシーンのあと、壊されてしまったようです。

それで、〈在天別流〉はどうなったかといえば、これは、いわぬが花。大きく時代が変わったときに〈別流〉がどうなるか、私自身のイメージは、章の言葉に託して、原作の最終話には書いています。

あと、これも、書くかどうかかなり迷ったのですが。このブログを読みにきてくださる方は原作にも興味をもってくださっている方だろうと思うので、やっぱり書きます。

最終話に出てきた左近と若狭の幼なじみ設定は、私が作ったものではありません。原作既読の方はご存じの通り、若狭の生まれ育ちや左近との出会いについて、私は明確に書いてはいません。今後、書くことがあれば知っていただくこともできますが、今はご想像にお任せするしかありません。なので「二人が幼なじみ」とのエピソード、よくある(かどうかは判りませんが)、原作者がドラマのために未発表の設定をあかした、ということではなく、あくまでドラマオリジナルです、とだけ、今は主張しておきます。ドラマの余韻も残るときに無粋かもしれませんが、やっぱりちょっと気になりまして。すみません。……あれはあれで、ドラマのラストとしては良かったかと思います(^^;)

〈在天別流〉の話は、洪庵シリーズだけでなく、弓月メインの「浪華の翔風」もありますし(コレなんとか文庫化できればいいんですけど)、これからも書いていくのではないかと思います。ドラマ化の話などかけらもなかった二、三年前に「今年の目標」として、「〈在天別流〉の新作を書く」というのを掲げていたくらいでして(結局、その年は目標を達成する時間の余裕が作れなかったわけですが)、大事に書いていきたい存在なのです。「浪花の華」を楽しんでくださったみなさまに、章や左近や若狭や弓月や赤穂屋が出てくる新しい物語を、あるいは、別の時代の〈在天別流〉の物語を、手にとっていただける日が来るように、精進したいと思います。

「浪花の華」については、まだまだ書きたいことはあるような気もしますが、まずはここまで。
ドラマ全体の感想は、現場の写真とともにまた書こうとも思っているのですが……(またずるずる時間が経ってしまうのではないかとの懸念も。写真も、UPする前には加工しなければならず、ちょっと手間がかかってしまって……汗)。

とにもかくにも。
本当に「おもろい」十ヶ月を過ごさせていただきました。
「緒方洪庵・浪華の事件帳」シリーズは、本当に幸運な作品になりました。
ドラマ関係者の皆様。テレビの前で楽しんでくださった皆様。ありがとうございました。

きっと今はもう新しい作品にとりくんでいらっしゃるであろう、「浪花の華」のキャスト、スタッフのみなさまの、今後よりいっそうの御活躍を、お祈りいたします。

ありがとうございました。