ドラマ化決定の第一報が私の家に届いたのは、5月某日、今から半年ほど前のことです。

5月のある昼下がり、突然の電話で「ドラマ決まりました」と鳥影社の担当編集者さんに言われまして。ホンマにいきなりのことだったもので、受話器握って「えええええええ?」という言葉しか出てきませんでした。担当さんからの電話を切った直後にはNHKさんからも電話がきたのですが、「ドラマ化の許可をいただきたいのですが」という言葉に、「えええええええっと……(何いえばいいんだろう)………あ、ありがとうございます」くらいしか出てきませんでした。ホンマにびっくりした。

それから一昨日の情報解禁日まで……長かったです。ドラマの制作過程がどのようなものなのか、まったく知りませんもので、「キャストっていつ決まるんだろう」「章や左近は誰がやるんだろう」「……そもそもホンマにやるんか?」「夢……じゃないよねえ。NHKのひとの名刺、手元にあるもんねえ。会ったよねえ、確かに。打ち合わせもしたよねえ……でもなんか………不安」等々と、なんとも落ち着かない時間を過ごしました。

ホントにやるんや、とようやく思えるようになったのは、8月末、改めてキャスティング表つきの企画書を送っていただいたとき。「あー、これ、本気やな、ホンマに動いてるんやな」と。

そのときの企画書を、少しご紹介します。……というのも、ドラマ化速報をあげたブログをあとから自分で、読み返してみて、「コレ、原作既読の方には判るけど、そうじゃない方にはまったくどんな話なのか判らない書き方だよね」と反省したのです。いきなり「雅楽指導は……」なんて書いても、なんで雅楽指導が必要なのかも判らないですよね……(汗)。

とりあえず、内容のご紹介を。
「緒方洪庵事件帳」シリーズというのは、こういう話です。

「大坂の名門蘭学塾「思々斎塾」で学ぶ緒方章は、備中の武家の三男。だが、体が弱く武道もまったくの苦手。大坂に出て二年、名医として名高い中天游(なか・てんゆう)に弟子入りし、医学修業に励む毎日だ。

一方の左近は、平時は饅頭屋の看板娘だが、時に袴に帯刀という男装で暗躍する謎の美少女。実は左近は〈在天別流〉と呼ばれる闇の一族のひとり。〈在天〉は、表向きは大坂の古刹に属して雅楽を奉ずる楽人組織であるが、その裏で、難波の宮の時代から千年もの間、大坂の町の守り神として、荒っぽい手も駆使して事件を解決してきた、知る人ぞ知る存在だったのだ。

偶然の出会いから、なぜか一緒に事件を解決するようになる二人。武士のくせにヘタレな章は、修羅場になると左近に助けられてばかりだが、持ち前の正義感と良心とで一人前の若者として成長していく。さらに左近への恋心をふくらませていくが、自分と比べて身分も生き方も違う相手に気持ちを打ち明けることもできず……」

江戸時代の大坂といえば商売の町、というイメージが強いと思います。もちろん、物語にも様々な商人が登場しますが、それだけが大坂ではありません。

難波の宮から千年続く歴史と文化が息づく古都としての大坂。
近代につながる蘭学のメッカとしての大坂。
武家や公家といった権力者よりも、町人が主導権を持つ町として誇りを持つ大坂。

そういった大坂のさまざまな姿を、章や左近だけではなく、鎖国下の日本で西洋医学の修業に励む思々斎塾の若者たちや、千年の伝統に誇りを持って生きる〈在天〉の楽人たちの姿を通して伝えられればと願って描いた物語です。

今回、在阪テレビ局であるNHK大阪さんが、この物語を映像にしてくださることを、とても嬉しく思っています。

そういうわけで、「雅楽指導」が必要なのは、ヒロイン左近を含む在天楽人役の方々に、それなりの雅楽シーンが登場する予定だからです。〈在天別流〉は雅楽あってこそ。なので、そのあたりも、どうぞお楽しみに。私も、それはもう楽しみにしています。雅楽ファンにも楽しんでいただけるドラマになるといいな、と願っています。

とりあえず、今日はここまで。
ドラマについては、またアレコレ、書きます。

最後になりましたが、個人的なお礼をば。
ドラマ化決定から、情報解禁までの半年間。
テレビ業界のことを何もしらない私の相談&悩み(不安)打ち明け相手になってくれたのが、天王寺楽所時代の楽友であり、テレビ業界で働く頼れるお姉様でもある、占星術カウンセラーのしろたま様。
「こんなに長々と箝口令期間があるなんて耐えられない! そもそもコレ、ホンマにドラマになるんかな……」といった不安から、「ところでプロデューサーとディレクターって何が違うの?」といった基本事項まで、ひとつひとつ親身になってきいてくださり、テレビの制作現場の常識をあれこれレクチャーしつつ、狼狽えてばかりの私を「不安は判るけど、でも基本、めっちゃ楽しみやんか!」と元気づけてくださり。もう、何度「長話」につきあっていただいたか判りません。
しろたまさま、ホンマにありがとう。感謝しています。そして、今後は「Office-K」のボスとしても、どうぞよろしくお願いします。